「もう帰ったみたいだな」
葵の声がして、もう一度目を開ける。
葵は私の目の前にいて、
さっき京子が座っていた丸椅子に座っていた。
「なんであんたがいるの」
「いてよかったろ?」
「そうじゃなくて、
なんであんたがここにいるのって」
「なんでかね。
本当に三階にいるのか確かめに来た」
葵がサラッとそんなことを言う。
私は肩で息をして葵を睨みつけた。
葵はそれでも平気そうな顔をして私を見ている。
「しんどくなっただろ。友達に劣等感感じてさ」
「なに?」
「別に気にすることねぇよ。
今のお前がやるべきことは治療に専念することだ。
勉強だとか人間関係の確立とかは二の次だよ」
「今、何て言った?」
「あ?」
「劣等感?私が?」
「そうだよ。それがどうした」
今ので完璧、怒りMAXになる。
私は身を乗り出して葵の胸ぐらを掴んでいた。


