三月の向日葵




ベッドに身を投げて天井を見つめる。


そのまま耳をすませると、
時計の秒針が動いている音がカチコチと聞こえてくる。
その音を聴いていると妙に腹が立って、がばっと身を起こした。


「ああもう。なんなの」


なんだかあいつに心の中をかき乱された感じ。
むしゃくしゃするこの気持ちは何なんだろうか。


ただ単にあいつがむかつくだけ?
もう分からないけれど、とにかく何かに当たりたい。


ストレスを発散しようにもここには何もない。
それがまたストレスに変わるんだ。


こういう時、この腕に繋がれている点滴を
引きちぎりたくてしょうがなくなる。


だって当たるって言えばここしかないもの。


前にそうしたことがあったけれど、
その時は大変だった。


激しい発作的衝動に襲われて
気付いた時には私は集中治療室の中だった。


あんな思いは二度としたくない。


でもまたそうしたいと思うのはなんでだろう。


もうやけになっているのかな。
うん。どうでもいいや、こんな人生。


「茉莉ちゃん、体調はどう?」


「芳子ちゃん」


芳子ちゃんが顔を出した。
はっと我に返って、腕に伸びていた手を咄嗟に引っ込めた。


危なくまたあの苦痛を味わうところだった。


「どうかした?」


「なんでもない。いつも通りだよ。元気」


「そう。なら良かった。お友達来てるわよ」


芳子ちゃんがそう言うと、
ドアの隙間から京子が顔を覗かせた。


今日はそのサラサラの髪の毛を下ろしている。


「茉莉。また来ちゃった」


「何。まさかまたみんなを連れて?」


「違うよ。今日は私一人だけ!」