人のこと馬鹿にしたような言い方。
付き合ったことはない。
こんな性格だからか、男と女っていう関係が
意味分からなかったし、
男子はいつも仲間って感じだったし、
女として好かれたこともないし……
坪井は例外だけどね。
だから私はそういうことには疎い。
当たり前のように経験があると思われちゃかなわないよ。
葵はびっくりしたように目を丸くして私を見たけれど、
すぐにニヤリと笑った。
あ、なんか企んでる。
「じゃあ俺が教えてやるよ」
ほら出た。変なこと言い出した。
ああ、男ってこういうこと言うのが好きなのかな。
「別にいい。あんたのお母さんさえ騙せればね」
「騙すって言うなよ」
「騙してんじゃん」
呆れたように頭を抱えた葵。
私は何も間違ったことは言っていないぞ。
「とりあえず、キスでもしとく?」
「は、はぁ?き、き、キスって……」
「冗談だよ。そんな動揺するなって」
「あんた、殺してやろうか」
「遠慮しとく。まだ死にたくないんでね」
キスなんてそんなこっぱずかしいこと出来るわけがない。
冗談だとしてもやめてほしいよ。


