三月の向日葵




人のこと馬鹿にしたような言い方。


付き合ったことはない。
こんな性格だからか、男と女っていう関係が
意味分からなかったし、
男子はいつも仲間って感じだったし、
女として好かれたこともないし……


坪井は例外だけどね。


だから私はそういうことには疎い。


当たり前のように経験があると思われちゃかなわないよ。


葵はびっくりしたように目を丸くして私を見たけれど、
すぐにニヤリと笑った。


あ、なんか企んでる。


「じゃあ俺が教えてやるよ」


ほら出た。変なこと言い出した。
ああ、男ってこういうこと言うのが好きなのかな。


「別にいい。あんたのお母さんさえ騙せればね」


「騙すって言うなよ」


「騙してんじゃん」


呆れたように頭を抱えた葵。


私は何も間違ったことは言っていないぞ。


「とりあえず、キスでもしとく?」


「は、はぁ?き、き、キスって……」


「冗談だよ。そんな動揺するなって」


「あんた、殺してやろうか」


「遠慮しとく。まだ死にたくないんでね」


キスなんてそんなこっぱずかしいこと出来るわけがない。
冗談だとしてもやめてほしいよ。