三月の向日葵




声が揃って口を噤む。
何も言わない私を見て、葵はまた口を開いた。


「空を見るってなんだよ。
 俺をそんな気持ち悪いロマンチストにするなよな」


「悪い?空を見るのが好きな私に喧嘩売ってるの?
 何も思いつかないんだからしょうがないじゃん」


「シナリオを考えれば良かった」


「そっちこそ何?守るって?何が弱いんだよ!
 私は泣いてなんかない!」


「事実だろ」


「私がいつ泣いた?」


「泣いてたよ」


あまりにも真剣に言うものだから拍子抜けして何も言えなくなった。
そんな顔で言わないでよ。


「昨日だって泣いてた」


「い、いつ?」


「中庭で」


私は確かに泣いてなんかいない。
何を言っているの、こいつ。


でも真剣で、嘘をついているとか冗談を言っているとか、
そんな風には見えなかった。


真剣そのもの。
でも、私は本当に泣いてなんか……。


「まあ、いいや。母さんちょろいって言っただろう。
 あれで安心したと思うよ」


「そう。ならもういいよね。半年と言わず今終了。
 これでおしまい」


「それはダメだ。母さんは入院中何度も来るんだから
 フリを続けないと。
 一日で終わるなんてまた落ち込むだろう」


面倒くさいなぁ。


「でもフリって何をするの?」


「お前、付き合ったことねぇの?」


「ないよ。文句ある?」