「そんなこと考えちゃだめよ」
「うん。分かってる。ごめん」
私が謝って箸を持ち直すと、
芳子ちゃんは点滴を素早く交換して部屋を出て行った。
ご飯を無理やり口の中に放り込んで、水で流し込んだ。
芳子ちゃんが置いて行った薬を飲み込む。
気持ち悪くなったけれど、
これがないと体調が悪いのも事実。
飲むしかないんだよね。
早くこの生活から抜け出したい。
楽に死にたいよ、本当に。
今日は体を拭いてもらうのと
頭を洗ってもらう予定が午前中に入っていた。
私は朝早くからそれを頼むことにした。
芳子ちゃんが準備をしてくれて、
体からまず拭いていく。
本当はお風呂に入りたい。
湯船に浸かって気持ちよくなりたい。
タオルで拭くだけなんて清潔感がない。
でも我慢しなくちゃならない。
病院にお風呂があるわけじゃないんだから。
芳子ちゃんは丁寧に体を拭いてくれた。
さっき悲しい思いをさせたから、
私はわざと明るく振舞った。
鼻歌を歌ってみせると、
嬉しそうにしてくれて、一緒に歌った。
次に頭を洗ってくれる。
これがまた気持ちいんだ。
誰かに頭を洗ってもらうのって、
なんでこんなに気持ちいいんだろう。
うっかり寝てしまいそうになる。
私の好きな青りんごの匂いのするシャンプーは
私の髪に溶けていい匂いを放つ。
ドライヤーでしっかり乾かしてもらうと、
櫛で梳かしてくれた。


