三月の向日葵






朝はいつも、ああ今日も生きているんだなって思うことから始まる。


また死ねなかったな。
寝ている間に苦しまずに死にたいと、いつも思っている。
だから朝目覚めるとがっかりする。


今日もこの一日を生きなければならないのか。


「おはよう、茉莉ちゃん。今日も天気がいいわよ」


ちょうど部屋に入って来た芳子ちゃんがカーテンを開けた。


眩しくて目を細める。


芳子ちゃんは廊下から朝ごはんを運んできて
私のテーブルの上に置いた。


栄養バランスの整っている薄味の病院食を食べるのはあまり好きじゃない。
好き嫌いはしないほうだけど、この味がどうにも気に入らない。
何を食べても美味しく感じないもん。
なんでこんなに食欲を削ぐような味にしてあるんだろう。


これが健康にいいってことくらい知っているつもりだけど。


箸でサラダをつつく。
テレビをつけてニュースを見た。


やっぱり凶悪な殺人事件について語っているニュース。


嫌気がさすな。食欲も失せてしまう。


「ねえ、芳子ちゃん」


「なあに?」


「人ってなんで人を殺すのかな」


「難しい質問ね。世の中には悪い人がいるってことね」


芳子ちゃんは淡々とそう言った。
点滴を交換してくれる。
私はテレビから目を離さずに箸を置いて呟いた。






「私も死にたい……」






「茉莉ちゃん!」


弾かれたように、芳子ちゃんがテレビを消した。


ぶつんと真っ暗になった。


はっとして芳子ちゃんを見ると、
彼女は悲しそうな顔をしていた。