三月の向日葵




「ほら。並び変えると、向日葵。
 あんたも花の名前なんじゃん」


「……そんなこと言われたの、初めてだよ」


「えっ?みんな気付かないのかな。
 私はすぐ気付いたけど」


「親はなんか男でも女でもどっちでもいい名前で
 一文字が良かったから、響き的に葵にしたって言ってたな」


「そうなの?でも、綺麗な名前だね」


私がそう言うと、葵は照れくさそうに鼻をかいた。


「俺は女に間違われるから嫌だ」


「ねえ、あんたも重い病気なの?


「……別に。ただの貧血」


「点滴しなきゃいけないほど?」


「これはただの栄養剤。お前は?」


葵が私を見つめる。
私の心は一気に陰りを見せた。


ああ、そうだった。
私は病気なんだった。
そのことを改めて思い知らされる。


「ガンなの。私、死ぬんだ」


「治んねぇの?」


「さあ。でも、手術はしたくないの。
 体にメスを入れられるのは嫌。だから、私は死ぬ」


「……へぇ」


聞いたくせに興味もなさそう。
まあ、それが一番楽だけれどね。


「じゃあ、俺は病室に帰るわ。お前、病室何階?」


「三階」


「そ。大変なんだな」


うちの病院は病状によって階が決められている。


一番重篤な患者は五階。


その次が三階で、
一番軽い症状の患者は二階になる。