三月の向日葵




「か、体でってあんた……
 それは大人の言うセリフでしょ」


「あ?何変な勘違いしてんだ?」


葵は眉を顰めて私を見た。


あれ?そういう意味じゃないの?
びっくりした。
体でなんて言うから私はてっきり……。


「俺の母さんさ、最近うるさいんだよね」


「何が?」


「彼女の一つもいないのかって。
 だから安心させてやりてぇんだ」


「だから?」






「お前、俺の彼女になれ」







「……はっ?」


えーと。言っている意味が分かりません。
私が誰の何になるって?


葵はいたって真剣な顔で私を見つめる。
私は手にしていたノートを床に落とした。


「ダメとは言わせねぇ。
 しっかり体で払ってもらうぞ」


「えええぇ!」


大きな声をあげた。
葵がうるさいと耳を塞いだ。


「とりあえず、半年でいい。半年も付き合ってる風にしてれば
 母さんも納得するだろ。後は適当に別れたことにすればいいし。
 それまでは彼女のフリをしてもらうからな」


「はいはい!一つ質問。それって私じゃなきゃだめなの?
 他の子を紹介するけど」


「お前じゃなきゃダメだ」


「なんで」


「なんでも」