勢いに押されてぽかんとしていると、近くにいた女の子が控えめに楓菜を諭した。

「ちょっと楓菜？そんなに勢いよく話しかけられたら、誰だって驚いちゃうって…。自己紹介出来たのはいいけど、もうちょっと落ち着いて？ごめんね、桜夜ちゃん。私、桜葉寧々。このクラスの中の人、きっとまだ覚えられてないよね。私も、軽音部の一員なの。よろしくね。」

「うん！よろしくね！」

今まで、私は少し遠巻きに見られていたのだろう。

実際、まだ顔と名前が一致しない子も多かった。

「今日、行けたら見学行くね。軽音部。」

「やったー！待ってるね♬︎」

嬉しそうな楓菜と寧々ちゃん。

もっとも、寧々ちゃんは少し微笑んでいるだけだったけど…

友達が増えそうな予感で、私の胸は高鳴った。

「軽音部って、どこで活動してるの？」

「視聴覚室だよ！今日の放課後は特にやることもないから、見学来てくれて大丈夫だよ。」

「そっか。じゃあ行けるようにしとくね。」

私がにこりと笑うと、楓菜と寧々ちゃんは顔を見合わせて笑った。