ハナノユメ

 花は走り出した。誰か、知っている人を探した。まるでこの学校が別の次元の、花のいない世界になってしまったようだった。気にしてみると過行く生徒たちは誰も自分をみとめない、見ていない、そんな気がした。
 玄関ホールまで来ると、ユリアを見つけた。花は、ユリアまで花を無視したらどうしようかと泣きたい気分になりながら、恐る恐る呼び掛けた。ユリアは豊かな栗色の髪を振って、振り返る。花は安堵した。だけどまだ心臓は奇妙にはねていた。
「花、そんな怖い顔して、どうしたの?」
「ううん、ううん。何でもないの。きっとちょっと疲れていたの」
 花は走ってきた息を整えると、自分にもそう言い聞かせた。ユリアは花を見ている。だけど花の不安は完全には払しょくされなかった。ユリアが目を見張るように花を見ていた、その不自然さを花は感覚で感じ取った。指のささくれのように、あの時感じた孤独や不安は花につきまとって、ふとした瞬間に違和感や痛みを与えた。