『私も…今の、エイプリルフールだから…』
なんとか彼にしか聞こえない程度の小声で、そう言い切った。
『…はぁ…バレないかって緊張して損したー!』
『…っー!…こっちこそよ!』
『なんだとー?』
『ばーか』
何時ものごとく下らない言い合いへと話題が変化する。
(あーもー!雰囲気良い感じだったのに!)
『て言うか…その…さ…
あー、やっぱなんでもない!
忘れてくれ!』
『この、メンタル弱々馬鹿が…ばーか!』
(なんで告白してくれないのよ!!
今の流れ的に100%OKするの分かってるでしょ!?)
その本心が喉まで来ているのに、声に成らない私も、人の事を言えないのだけれど。
たまには…焦らされた分、ワガママを言っても良いだろうと思い、私は一言、こう言ってベンチから立ち上がった。

『日曜日の午前11時に駅前集合、拒否権なんて無いから、予定、開けといてよね』

『りょーかい』

そう言った彼が笑顔に成ったのは振り向かなくても分かる。

(待っててね、日曜は素直になるから)

『ほら、流石にそろそろ戻んないと授業に遅れちゃうよ』
『おう!どっちが先に着くか勝負だ!』
『いーよ、圧勝しちゃうんだから!』


この恋がやっと動き出す。
そんな日曜日に淡い期待を抱きつつ、私は彼と走りながら、ベンチを後にした。