『はぁ…格好良い…』
私がそう言ったのは、私達の秘密の場所の旧校舎の鍵の壊れた窓の近くの階段だった。
『何がだよ?』
そう聞いてきたのは、クラスメイト。
ここの秘密を共有する唯一の人で私の好きな人。
『高校生5人組のロックバンドだよー!
歌詞も声も格好良くて、メンバー同士の会話とかも面白いの!』
と、私は彼に力説する。
『そうかよ』
と、珍しく不機嫌そうに、彼は返した。
『あれ?どうかしたの?』
私は彼の顔を覗き込む。
『俺が居るのにそっち見るのかよ』
『え?』
いつもの元気な彼の明るい声とは似ても似つかない、どす黒い声が旧校舎の階段に響く。
『他の男より、俺を見ろよ!
俺は、目の前に居るだろ!』
私は固まった。
そして、意味を理解しだすと、急激に体が熱くなった。
『勘違いしてるよ…私が好きなのは君だよ…そもそもバンドの子は女の子だよ?…』
『えっ!?』
彼は驚いて顔を赤くして固まった。