『え…お前それ本気かよ…』
そう彼に問いかけられた。
それもそうだ。
別に彼と話したこともそう多くはないし、別にそれらしい行動をとった覚えもない。
信じられないのだろう。
『本気…だよ』
何とかこの近距離の状況で恥ずかしさを堪えて私は声を出した。
『なぁ、俺の何処が好きなんだよ?』
彼は本気だった。
困らせようとかじゃなくて、本気で不安な顔をしていた。
こんな顔にさせたのは自分だ。
ならば、責任をとって安心させるべきだ。
私はそう思い、又声を出した。
『授業中の寝てるあどけない顔』
私も彼のように彼の事を本気で好きだった。
だから、相手に気付かれないで見る時間が欲しかった。
それこそが、授業中に居眠りを度々行っている彼の居眠りを観察する時間だった。
ノートをとったり、先生の話を聞いたり、挙手したりしつつ、こそこそとチラ見する時間はとても有意義で楽しくて心に残る時間だった。
私はそれを思い出してそう言ったのだ。
『後は?』
彼は又本気で真剣な雰囲気の顔をした。
私は又答えた。
『走ってる後ろ姿』
彼は陸上部だった。
そして、足が速かった。
そのいつもの気だるさとは違って、真剣な今みたいな顔で全力で走っている彼が私は大好きだった。
その顔が好きで、部活帰りに校庭を通る事を良いことに、部活の仲間と話ながらちょいちょい視線を彼へ向けていたのだ。
授業中だって、そうだった。
体育の授業の50m走なんか最高でしかない。
そんな事になるくらい私は彼の事が好きだった。
『次』
『笑った時の子供みたいに無邪気な顔』
それは、彼が友達と話している時の事だ。
いつもは冷たく凛々しく格好良い彼の顔だが、友達と楽しそうに話している時は笑顔が眩しい程だった。
いつもとうってかわって可愛くて子供っぽくて眩しい笑顔は隣の席だからこそよく見れた。
最近は私の力で彼を笑顔に出来たらと思う程だ。