『私は…二人とも好きなの…
結城も昴くんも、友達として好きなの!
だから、ゴメン。
私には、どちらか片方なんて選べないよ』
私は、二人の気持ちを踏みにじってしまった気分になり、下を向いて、泣くのは私じゃないと、下唇を噛み締める。
すると…
『おい、何泣きそうな顔をしてるんだよ。
何だ?友達としか見てないのと選べない事がそんなに苦しいか?
じゃあ、楽にしてやろう』
結城はいつもみたいに、得意げで自慢げな顔をしてそう言った。
『え…?』
その言葉と表情の意味が理解できず、私は、涙が溢れそうな瞳を瞬きをしないように耐えながらきょとんとする事しか出来なかった。
すると…
『グイッ…!』
『選べるようにしてやるんだよ…俺をな?』
強引に、私の左腕を引いて、耳元で、結城はそう、囁いた。
『え…えぇー!?』
私は、驚きながら、顔を赤らめた。
『うっわ、顔真っ赤。
こりゃー俺を好きに成りそうだなー?
す・ば・る・く・ん?』
わざとらしく昴くんを挑発するように結城は言った。
『結城先輩。
そんな風にドキドキさせっぱなしじゃ、飽きられる事も分からないとは思いませんでしたよ。
たまに、急激にドキドキさせるのが俺のやり方なので』
と、余裕そうに昴くんも結城を挑発する。
『ちょ、二人とも…止め『黙れ』
結城に私の言葉を止められた。
いや、遮られた。
『なぁ、早く、俺の事、好きに成れよ?』
『いや、それは、俺の台詞ですよ?とらないで下さい』
『ちょ、二人とも落ち着い…て、うわっ!?』
私は、慌てたせいで、下駄箱の辺りの床の段差に勢い良くつまずき、後ろに転びかけた。
すると…
『危ない!!』
『危ねぇ!!』
ギリギリの所で、飛び出して来た二人の手が、私の体を支えた。
私は、思わず、二人に同時にときめいてしまう。
こんなんじゃ、片方なんて選べないよ…もうっ!