『お前、好きな人居るらしいな』
『…』
彼女は頬を赤らめ頷いた。
あぁ、彼女から聞きたかったのにな…
何て、俺はくだらない事でイラつき始めるのを何とか隠そうとする。
今は皆、部活中で、夕日の見えるこの教室には誰も居ない。
なぁ…誰だよ?
聞きたいのに、喉の奥で声が止まる。
言ったらこの気持ちに気付かれて、友達で居られなくなるかも…
フラれたら…
嫌な予想がよぎって、自分の声を遮る。
『君は?…』
おどおどした様子で彼女は聞き返してくる。
言いたい。怖い。
2つの気持ちが交差する。
俺は、逃げた。
『居ない』
彼女は好きなんかじゃなくて、大好きな人で…
とか、逃げてしまった。
『そっか…
じゃあ、出来ると良いね』
『は?』
俺に好きな人出来ても良いのかよ。
『だって楽しいから』
一人、彼女が部活へ向かった後に教室で呟いた。
『こんな筈じゃないのにな…』
それを聞かれていたと知るのは…?