『大雨かぁ…』
よりにもよって、買ってもらったばかりのお気に入りの傘を忘れたのは私だ。
仕方ない。
私は渋々、お気に入りのパーカーを濡らす決意をする。

私はそれからひたすら走った。
途中途中、屋根の有る所で足を休めつつもとにかく走った。

すると…
『にゃー…にゃー…』
震えたような、猫の鳴き声が聞こえた。
その方向に目をやると…
灰色で青い目をした子猫より少し成長したけど、大人とは言えないような猫が、空き地に無造作に置かれた段ボールの中に捨てられていた。
私は思わず、お気に入りのパーカーが濡れる事も忘れて、近付いて、手を出す。
すると…
『え!?』
『うわっ!?』
誰かの手と重なり、驚いた。
その手の付く人間の顔を見ようとすると…
『あ、君…もしかして…』
それは学校で、不良で有名な男だった。
『すみません…大丈夫ですか…?』
と、彼は風貌にそぐわない優しい声で言いながら、さしていた黒い傘を自分が濡れる事も気にせずに差し出す。
『あ、大丈夫です!!』
『いや…でも…傘、無いんですよね?』
『は…はい』
『じゃ、入って下さい』
そう言われ、私は、彼に近付く。
『取り敢えず…この猫、どうしましょうか…?
保護…て、どうすれば…』
『あ、私の友達の家が、動物病院なので、その家に取り敢えず預けてもらえるか聞いてみます!』
私は、そう言うとスマホで友達に電話する。
LI○Eだと、気付かない可能性も有るからだ。