『あ…』
そこにはクールそうな黒髪のイケメンが居て。
彼は何かを見ていた。
その視線の先には、段ボールに入れられた弱っている捨て猫。
私の家、動物病院だし、話しかけて、連れてこうかと思ったその時。
彼は急に段ボールごと持ち上げて、走り出した。
(その方向、帰り道だし…)
何て、言い訳して、単なる好奇心で私は付いていった。
すると…
(え、そこ、私の家なんですけど…)
彼は、なんと、私の家に来たのだ。
正しくは、両親が営む動物病院に来たのだ。
(優しいかよ)
と、思いつつも私は動物病院に入る。
(自宅だし)
何て、言い訳して、又、単なる好奇心で私は入った。
『あらー…
可哀想な猫ね。
でも、助けてくれて良かったわー!
今なら見る限り、助かりそうね』
『それは、良かったです』
と、私の母が彼と話をしていた。
『あ、帰ってたの?
気付かなかったわー!
お帰りなさい!』
『ただいまー』
『あ、猫をこの人が、助けてくれてねー
あら、よく見たら、同じ制服じゃない?
あ、この子家の娘ね』
と、母に両肩を掴まれて渋々挨拶をする。
『ど、どうもー』
私はバレてたらって事を考えたり、今までの自分の行動の罪悪感で、緊張してしまう。
『どうも』
彼は、冷たくそう返して猫を見た。
(そんなに心配なのかー…
やっぱ見かけによらず、案外優しい?)
『じゃあ、私はこの子の治療してくるから、後、宜しくねー』
と、母は奥の治療をする部屋へと消えていった。
『とりあえず、帰りますか?
猫の治療が終わるまで待ちますか?』
『待たせて下さい』
『じゃあ、飲み物とか飲みますか?
お茶とかスポドリとか水とか有りますけど…』
『敬語止めろ』
『はい?』
『何か緊張する…後、多分同じ学年だし』
『そっ、そうで…そっか!』
ぎこちないなりにも何とか私は敬語を止めた。
(なんだ、緊張してたのは私だけじゃないのか)
と、ちょっと安心した。
『あ、何で同級生だと思ったの?』
私は何とか話を繋げて気まずくならないように質問をする。
『よく廊下で見かける』
『え、よく覚えてるね』
『俺、記憶力良いから』
『そしたらテストとか点数高そうで良いなー!
羨ましい!』
『勉強になると記憶力落ちる』
と、言うと、何かを思い出したのか、あからさまに彼は、落ち込んだ。
『で!でも!私も勉強得意じゃないんだよねー!
今日、抜き打ちテスト有ったんだけど、赤点で居残り雑用させられてさ!』
『そうか、大変だったな』
『うん』