「はいはい、鼻血ね。よくあるよくある!バスケやってるとそういう子よく来るのよ」

保健室の先生が、本当なのか嘘なのかよく分からないことを言う。
慰めてくれてるんだろうな。
すいませんほんとに。

「明梨は大丈夫なんですか…?」

鼻にティッシュを詰めてもらう私の隣に、心配そうな律が座っている。

今は体育の授業真っ只中。

鼻血を出した私を、律がここまで運んでくれたわけだけど。
よく考えたら相当にやばい。


まあでも、律は誰にでも優しいからなぁ……。


「大丈夫よ〜!ふふ、でも心配だよね〜、妹みたいなもんだもんね?」

「まあ、そんな感じなのかも」

くすくす笑う律。

保健室の先生は私たちが一緒に暮らしていることを知っている。
この学校でこの事実を知っている人は、彼女と担任の先生、あと優妃しかいない。
律は誰にも言ってないらしいし。

「てか、ボール当てたのって辻だろ?あいつのパス鋭いからなぁ……」

「辻?あ、伊織くんの名字って辻なの?」

「え、知らないの?辻伊織って、女子の間でイケメンだって騒がれてるんだろ?」

いや、それと同じくらいあんたも騒がれてるんだって。