けれど、その前にもう1つやらなければ行けないことがある。
 そう思い、夕映はスマホを手に取ってメッセージを送ったのだった。





 相手に連絡を入れると、すぐに返信が来た。
 その日の夜に会えると言う事だったので、夕映は待ち合わせ場所を指定した。
 もちろん、近くのカフェだ。





 「夕映先輩!この間はすみませんでした。」
 

 いつものカフェで待ち合わせをして、お互いにミントココアがテーブルに置かれた時だった。
 依央は、頭を下げて突然謝りだした。
 彼が話しているのは、この間本屋に出掛けた帰りの事を話しているのだとすぐにわかった。
 依央から、何回か連絡があったけれど、夕映が会える状態ではなかったのだ。
 その返事をこの日にしたため、依央はすぐに来てくれたのだ。
 静かだった店内に大きめの声が響き、一瞬視線を集めた依央は、「す、すみません……。」周りにまた頭を下げた。
 その後、眉を下げて申し訳なさそうに夕映を見つめた。



 「この間、僕、少し動揺してしまって。夕映先輩を傷つけちゃいました。……すみませんでした。僕の気持ちを一方的に押し付けてあんなことするなんて、最低です。」
 「依央くん……。」
 「夕映先輩に嫌われたらどうしようって考えてて。でも、嫌われることをしたんだから仕方がないって少し諦めてました。……だから、今日こうやって夕映先輩が返事をしてくれただけで、ホッとしたんです。……ありがとうございます。」


 依央は力なく微笑んだ。
 それが、本当にホッとした様子だったのを見て、夕映は自分が返事をしなかった事が彼を悩ませていたと知った。
 自分の事でいっぱいいっぱいになってしまっていたのだと、改めて気づいたのだった。

 今日彼に会ったのは、依央に謝ってもらいたいからではない。
 自分の正直な気持ちを伝えたいと思ったからだ。夕映は、しっかりと依央の瞳を見据えた。


 「依央くん。あの時は、依央くんが気持ちを伝えてくれたのに、逃げてしまってごめんなさい。あの日に気持ちを伝えてくれるって依央くんは言ってくれたのに、あんな態度をとる私が悪いと思ってる。」
 「そ、そんな事はないです!僕がやりすぎたんですよっ!」
 「ううん。違うよ。私が依央くんの優しさに甘えて、逃げてただけ。………昔みたいに。」
 「………夕映先輩……。」