そう返事をしながら、彼の緑色の瞳を見つめる。すると、その瞳が少し揺らいだ。それがわかった瞬間には、彼の唇が落ちてきた。
 優しく額や目、頬、耳、そして唇に落とされる。それだけで、体に熱がこもっていくのがわかった。
 彼に与えられる気持ちよさにうっとりしながら目を閉じると、すぐに「夕映、目を開けろ。」と耳元で囁かれる。


 「ん………だって、恥ずかしいよ。」
 

 夕映の服を脱がしたあと、自分もセーターを脱ぎ、目の前には彼の引き締まった上半身が見えていた。何回も見ているはずの彼の体。
 それなのに、夕映まだ直視するのが恥ずかしくて仕方がなかった。


 「ダメだ。今から誰に抱かれるのか、しっかり見とけっていつも言ってるだろ。」
 「で、でも…………。」
 「たったく、しょーがない奴だな。」


 斎の言葉は乱暴だ。けれど、全く怒っていない、むしろ微笑んだ様子でそう言うと。夕映の体にギュッとくっついて抱き締めてくるのだ。
 裸同士の体が合わさり、彼を直接感じられる瞬間だった。裸を見るのは恥ずかしいけれど、こうやって素肌を合わせるのを夕映が好きだと、斎は知っているのだ。


 「ん………温かい。」
 「仕方がないから、少しこうしててやるよ。」
 「ありがとう、斎。」
 「………少ししたら、覚悟しとけよ。」
 「…………はい。」


 夕映はその言葉をドキドキしながら聞いていた。けれど、その先の事を期待していないわけではない。
 彼が自分を求めて、名前を呼び、そして気持ちよさそうにしてくれる。そして、その快楽は彼と同じなのだとわかる時間。
 夕映はその行為と時間が好きだった。
 もちろん、恥ずかしいから口には出せはしない。けれど、彼も気づいているだろう。
 きっと、斎も同じ思いなのだから。




 そんな事を思いながら、その日は彼の生まれ育った部屋で、彼に抱かれたのだ。


 このベットで過ごすのは最初で最後になると、その時は知るよしもなかった。