プロローグ

その夜は村中のものが飛び起きる程の悪夢を"視た"。
ヴォルヴァ族で構成されているこの村の女性は、大なり小なり不思議な力を持っており、その大半が予言の才を持っていた。そして、その悪夢のような夜は明日かそれとも一年後かわからない。しかし、必ず来ることを皆が確信していた。
"いつか"殺されると分かっていても、一族には何としてでも守らなければならない物があった。絶対に他の者に触れさせてはならない、ましてや、使われてはならない物をずっと守っていたのだ。女神フレイヤから授かった"それ"を守るためにヴォルヴァ族は存在している。
その夜視た、大地を揺るがす程の大軍は"それ"を狙ってこの一族に圧力をかけ襲ってくる。それが紛れもない真実だった。
 皆が視たあの悪夢。きっともうすぐであろう…
 "あれ"をどうするかが問題だ。
 アース大国の奴らだろう。"あれ"を狙っている…どんな犠牲が出ようと守らなければ…
 あぁ、"あれ"だけは絶対に守り抜かねばならない。
 フレイヤの愛子に託すか。
 そんな!あの子はまだ15歳です。
 そんなこと皆が承知の上でだ!女神のご加護のあるあの子が最適だろう。………可哀想だか…
かくして、代々この一族が守り抜いてきた"もの"をアース大国から守ることになった、少女の名はリリーエと言った。