いきなりカウンターパンチを食らった気がした。
確か…人材派遣会社の一員とか言ってたっけね。人が足りてないからか?司会役に駆り出されたのだろうか。
シェヘラザードの元カレは濃いネイビーのスーツに、同系色のストライプ柄のネクタイ。髪もきっちり過ぎず、かつラフ過ぎず…いわゆる今風ってので似合っている。
「ねぇ、あの人かっこよくない?司会役の」
と、早くもシェヘラザードの元カレに目を付けたのだろう、隣に座った二十代半ばの女の人たちがひそひそ。
まぁ確かに。悔しいけどホントにかっこいい。俺なんて比べ物にならないくらい。
元カレは、挨拶の後、この後約一時間のフリータイムで立食、会話をして、その後男女交えてのミニゲーム、それから気に入った人と二人きりでトークする『トークルーム』へのご案内を説明していた。
話を聞いてるだけでは健全な(?)婚活パーティーと言える。
ちらり
俺は背後の壁の近くで立っているシェヘラザードを盗み見たが、彼女は真剣な顔つきで司会役の元カレをじっと見ていた。時折、事項を確認するように手元のファイルに視線を落とし、真剣そのものだった。
その視線が、仕事に対しての情熱なのか、元カレに対しての愛情なのか
分からなかった。
分からないから、不安になる。
パーティーの概の説明を終えて「では皆様、会話を楽しんでください」と司会役の元カレは壇上を降りた。
その声とともにすぐに男女各々席を立ち上がったり、早速話しだしたりしている。
俺と同じテーブルについた人たちは年齢はバラバラだったけれど、どうやら楽しくお喋りと言う感じにはならなかったみたいで、すぐに料理やドリンクが並べられているテーブルへと向かって行った。
俺も……
と、腰を浮かしたときだった。
「一人じゃ退屈でしょ?でも料理はおいしいからたくさん食べて行ってね」とシェヘラザードが話しかけてくれて、ちょっとほっとしたんだ。



