「チーフのお知り合いですか?」と受付の案内嬢がシェヘラザードに聞いていて『チーフ』と言う肩書がどの程度偉いのか分からなかったけれど、少なくとも受付嬢たちよりは上と言うことが分かった。
シェヘラザードは黒いパンツスーツに白いカットソーと言うシンプルないでたちで、髪もきっちりまとめ上げている。いかにもデキそうな女そのものだ。
「良かった~遅かったから来ないかと思った」
と、俺がこないだ盛大な告白をぶちかましたのにも関わらず彼女は思った以上にふつー。
それにもちょっとほっ。変にキマヅかったらどうしよう、とか悩んでたから。
「……いえ、それは流石に……あの、でも吉住…あいつは来れなくなっちゃって…俺一人なんですけど」
「一人でも来てくれて嬉しいよ。何せ男子の人数が足りないからね」と最後の方は小声でほとんど耳打ちするようにこそっと教えてくれた。
不意打ちに近づいて、またも彼女の纏う芳しい香りが俺の鼻の下を通り抜ける。
やっぱ
好きだ。
改めてそう思った。
会場に案内されると、開始5分前を切っていてすでに場は盛り上がっていた。ざっと見て男女合わせて50人程度。シェヘラザードが言ったように若干男率の方が少ない気がするが。
言われるがまま俺は出入り口に一番近い場所に腰を下ろす。
婚活パーティーって聞いた。確かに女性は20代後半~30代前半って感じだが、男の方は30~50って感じで幅広い。
婚活パーティーってもっとモテない、いかにも……な人たちが来るのかと思いきや意外にみんなまとも…と言うか普通。ってモテない普通な俺に言われたかないってな。
席について間もなく、会場の奥に設置してある司会者の檀上に一人の男がマイクを握った。
「皆さんこんばんは。本日はシャリマー・マッチングイベントにお越しくださいましてありがとうございます」
とマイクを通して挨拶したのは
あの人……
シェヘラザードの元カレだ。



