SHALIMAR -愛の殿堂-



「……彼女……由紀恵さん…」


もう由紀恵さんでいいや。


「俺が告って戸惑ってた。びっくりもしてた」


「そりゃそーだろ。お前、告るにも順序ってのがあってな~…」と吉住はフォークをふりふり。


「あれ~ヨッシーが食堂?珍しいね~♪今度あたしとランチしよ~奢るから」


と近くを通りかかった同じ科の女の子たちが楽しそうに吉住に話しかけてきて


「マジ?ミホちゃん好き~♪」


…………秒殺。


お前、さっき順序が必要とか言ったよな。


ダメだ。こいつに相談した俺がバカだった。と、すぐに思い直した。


残りのスパゲッティとチキンカツを早々に平らげ、俺は立ち上がった。てかおいしくないから勢いつけないと食べられない。


気付いたら、次の講義まであと数分だ。


「あれ?もう行くのかよ」と吉住は残ったスパゲッティをかきこむ。


まだまだシェヘラザードとの話を聞きたそうにしてたけど、俺はこいつに話すことはもうない。洗いざらい話しちまったからな。


俺の笑える失敗談を。


あれ……でも…


吉住は俺の失敗談を少しも茶化したり笑い飛ばしたり―――してない。


「お前ってさ、超が付くほど奥手だったじゃん?


でもさ、その場に来てその行動とか、すっげぇよ。ちょっと尊敬」


最後に残ったパスタ麺をフォークに巻きつけながら吉住がうっすら笑う。


「前のタケだったら考えられないぐらい。


恋して、成長したんじゃね?


もし敗れたとしても、この経験は悪かったことじゃない。ちゃんと次に生かせるんだ」


吉住―――………お前、ホントはいい…


「でも……ぷくく。やっぱウケる!!!!」


吉住はよっぽど笑うのを我慢してたのか、腹を抱えて豪快に笑い出した。


いいヤツ……と思おうとしたのに、前言撤回!


やっぱヤなヤツだな!!