そのまま、彼女を抱き寄せると俺は彼女を抱きしめた。
はじめて―――
はじめて女の人を抱きしめた。
彼女は驚くほど華奢で柔らかくて、そしてあの芳しい香りをいっぱいに感じて
俺が抱きしめてる筈なのに彼女に包まれている感じだ。
彼女が驚いたように身を強張らせたのが分かったが、あからさまな拒絶はなかった。
俺は彼女を抱きしめたまま
「俺はあなたが
好きです」
人生で初の告白なるものをした。
「え……?えっと……」
と、俺の腕の中彼女が戸惑いを見せる。
答えを―――今すぐに聞きたくなかった。
俺はやんわりと彼女を引きはがすと真正面から彼女を見つめて
「あんま見知らぬ男を入れるのは良くないですよ、やっぱ」
と一言、言い俺は玄関の扉を開けた。
「それじゃ。今日はごちそうさまでした」
ぺこりと一礼だけして俺は、まだ戸惑ったままの彼女を残し部屋を出た。
―――ところで、
やっちまったーーーー!!!!
まだ飛び出そうになってる心臓を上から宥めるようにして押さえ、俺はその場でへなへなと力が抜けた。
こ、腰が抜けた??
あんなタイミングで、しかも半分勢いみたいなもんだし。告るつもりなんてなかったのに。
でも
どうしようもなく不安だった。
彼女があの元カレのことまだ忘れられてない、って本能の部分で感じ取ったから。
俺は焦ったんだ。
たぶん、最初にあの男を目にしてから。
だって今の俺じゃ、あの元カレに勝てる要素、何一つ
ない。



