SHALIMAR -愛の殿堂-



てか慣れてる?


ほとんど接点のない男を簡単に家に上げることに。


「あの……あの男の人もう帰ったと思うので、俺も……」


帰ります。と続けたかったが、彼女が前を向き


「スーパーのお惣菜ばっかだと栄養偏るよ~、育ち盛りなんだし遠慮はしないで」


と笑う。


いやいや……俺の栄養の前に自分の身の危険を心配しろよ。とツッコミどころ満載。


断る口実を失ってしまって、それでもこのまま素直に上がっていいのかどうか悩んでいると


「どうしたの?」と彼女は、いつまでも玄関口で佇んでる俺の方に怪訝そうに振り返った。


「いや…あの……こうゆうのやっぱ、良くないですよ。


ほとんど知らない男を家に上げるのは」


何とか説明すると


「知らない……男?」


彼女は“男”と言う部分をわざと強調して聞いてきて、ちょっと吹き出した。


この反応……俺は男のうちにカウントされてない!?


「さっきのあいつよりまともなのは確かだよ。


てか真面目か」


とツッコミが入り、俺は頭を掻いた。


いや、俺は彼女をどうしようとか考えてないけど、でもガッツリ恋心は抱いてるわけで。


でもこれって吉住的に言うとチャンスじゃね?


もっとシェヘラザードに近づけるって、言う。甘い甘い……このお香のようなバニラのような独特の香りよりももっと―――


「お……お邪魔…します」


つまり俺は誘惑に負けた。