「何者だ……?」

後ろに居た櫂が、1歩前に出て尋ねるが、紫音が険しい顔で櫂の前に出て止めた。

運転手の男性は、まだ黙っていてこちらを見ながら微笑んでいる…。

そして、俺達を一通り見回した所で…

「皆!耳を塞げ!」紫音が叫んだ。

その途端、突然キーンと耳が疼くような音が響いた。

「…痛っっ!」「何この音!」
「頭がおかしくなりそうだ!」

普段聞く以上の音量の耳鳴りに、みんな耳を抑えて苦しむ。

その時だった。

周りの木がザワつきまた突風が吹くかと思うと、物凄い勢いで薔薇の弦が運転手の身体に巻き付いた。

「憂莉さん!?」

教会の柵の上にいつの間にか、赤い瞳の憂莉さんが立っていた。