『あ、そうそう。用ってのは今日の引っ越しの話なんだけどさ今、車でそっち向かってるから……』


「あ？待て。」




『ん？』



「引っ越し？楓引っ越しするん？アンタこないだ引っ越したばっかじゃなかったっけ。」




楓はつい２週間前、ベランダから東京タワーがよく見える高級マンションに引っ越していた。




『俺じゃねーよ。お前の引っ越しだろ！』




「はあ？何わけわかんないこと言ってんだよ。」



『え？お前明日からひとり暮らしすんだろ？』



「しねーし！なに言っちゃってんの。そのへんの女と間違ってんじゃないの？」




『あぁ！？んなわけねぇし！だって百合がそう言ってたんだぞ。』


「ママ……があ？」






あたしはピクッと眉間にシワを寄せてママを見た。



あたしの目線に気付かないママは鼻歌歌いながら目玉焼きを作っている。




『もーお前と話しててもラチあかねー！百合に変われ。』



「…ママー！電話、楓から！」



「あらッ、楓くんもうお家出たのかしら？」



ママに恐る恐る子機を渡す。






ものすんごく、








嫌な予感がする！