人混みが嫌いな僕には女子がなで好きなのかなんて理解不能だ。


はぁ…


ため息混じりな僕と航太をよそにマキマキとサーコはふたりで話を進めているようだった。



「そういえば、お前、今年はお茶会やんないの?」

「え?」



そういえば……



航太の発言で僕の頭の中に去年の夏休みがよみがえった。



うちの実家は前にも言ったとおり茶道の家元。

父親は僕にあとを継いでもらうために昔から人前でお茶をたてさせていた。


そして毎年恒例になったのが夏休みに行われる“夕涼み茶会”


茶室と中庭を開放し、同じ流派の先生や友達を呼んで僕がお茶をたて振る舞うのだ。


そのあいだ父親は自分の生徒や昔からの友達なんかと談笑している。


ようは僕ばかりが忙しく動き回らなくてはいけない超めんどい行事なのである。


去年は航太や中学の友達がたくさん来てくれたんだよね。


七海(ななみ)も来てくれたっけ…




でも今年は例年と事情が違う。


なんせ僕は実家に住んでいない!





「夏休み入って結構すぐだったよな、アレ。」


「え!?あぁ…うん…そうだったっけー…」


一瞬にして僕の額からじわりと汗がにじみ出るのが分かった。