「えと、野口 水夏ちゃんだよね?」

そんなことを考えていたとき、私はふいに声をかけられた。

「え?」

ぱっと顔を上げると、そこには肩で髪を綺麗に切りそろえた女の子がいた。

「あ、私、井藤 千華です。あの、次のオリエンテーション移動だから、よ、良かったら一緒に行かない...?」

そっか、理科は実験室に移動しないといけないんだっけ。

少し不安そうに目を泳がせる井藤さん。

「もちろん!ありがとう。」

私は笑顔で立ち上がった。


廊下で私は小さな声で尋ねる。

「井藤さん、だったよね?」

「あ、千華でいいよ。その方が呼びやすいでしょ?」

「じゃ、私も水夏でいいよ。」

「み、水夏。後で連絡先教えてもらえる?」

「おっけ!!」

「嬉しいな。高校でこうやって友達ができるの憧れだったんだ。」

千華が少し照れながら笑った。

「それ、私も!」

千華が私を友達って言ってくれてものすごく嬉しかった。

お互いに顔を見合わせてふふっと笑う。

「これから、よろしくね!」

「もちろん!ありがとう。」

千華が、さっきの私を真似して言う。

私たちは思い切り笑顔になった。