「なんで草むしりなんかしないといけないの…!」
夏休みの登校日。
宿題を持ってくるとともに校内清掃が毎年行われる。笑莉と文句を言いながら作業を進めてる最中。
「お前課題終わったの?」
いきなり声かけられて前を見たら、神田が立っていた。
「終わってますー。神田こそどうなんだい」
「俺はもちろん終わってるに決まってんだろ」
っていう言い合いを続けてるとふととなりにいる笑莉の視線に気づいた。いけない。好きなことは黙ってたんだった。
「お前、今日の盆踊り行くの?」
「うん、笑莉とね」
毎年登校日の晩には小学校で盆踊りが開催される。各地域の自治会が屋台出したり、最後に打ち上げ花火があったりして、小さいながらも楽しんだよね。わたしは今年初めて笑莉と行く。
「神田は?誰かと行く?」
「俺は裕と行く予定」
「だってさ、笑莉っ…」
笑莉のほうを向くと、ずきんと心が痛くなるのがわかった。
「羽田ここもあるぞー。さぼんなよー」
「さぼってんのは陽太じゃん。何言ってんの」
陽太と笑莉が楽しそうに喋ってた。笑莉にはそんな顔するんだ…。
「二見?」
はっとして神田を向く。
「んーん!さっわたしらもやろ」
それから笑莉となにを話したのかは覚えてないけどいつのまにか終わっていた。

「彩葉ー。こっちこっちー」
時刻は午後6時。盆踊りに笑莉と一緒に来てる。神田もういるかな?

笑莉と2人でいろいろ回ってると
「きゃっ!つめた!」
笑莉の悲鳴が聞こえてそっちを向くとしてやったり顔で陽太が水鉄砲を持っていた。
笑莉が陽太を追いかける。わたしはそれを見つめてる。いつから陽太とこの距離になったんだろ。普通に話したいだけなのに。
「あ、二見いた」
声がする方を向くと、神田と裕がいた。
流石イケメン。服なんでも似合ってんなぁ。
「やっほー。なんか回ったりした?」
「んや、これから」
たわいもない話で神田たちと3人でいると、笑莉が戻ってきて、結局そのまま4人で回ることになった。
好きな人と回るの密かな夢だったんだよね。

「最後はー打ち上げ花火です!」
司会の人の声を合図にみんなが一斉に並ぶ。
「裕くんたちー。陽太見なかった?」
声がする方を見ると、陽太のお母さんがいた。
「多分向こうだ。二見が知ってますよ〜」
にやにやしながら裕が答えるもんだからどきっとして焦ってしまったじゃないか。

「3、2、1!」
<ドーンッッ>
「キレー…」
笑莉が言う。神田が隣にいる。好きな人と花火が見れてる。なのになんでかな。君と見たいって思うのは。
陽太。なにを考えてるの?話したいって思う事すら駄目なの?
君と一緒に花火が見たかった。