「揶揄ってなんかいない…いい加減、わかれよ」

真剣な目つきにドキッと心臓が大きく跳ねた。

わかってしまったけど…
わかりたくない。

また、前の恋のようになるのが怖いから…

「それ以上、聞きたくない」

「なんでだよ」

また、腕を捕られて体ごと捕われてしまった。

「…帰って、私に、もうかまわないで…お願い」

「無理だ。好きなんだよ…」

力強い声の後、信じられないぐらい、か細い声が切なくて心に響いた。

「…向井さんは私を好きなの?」

あぁ、そうだと大きく頷く向井さんの前で、突然、私の頬を涙がつたう理由がなんなのかわからないけど、
口が何か言おうと開いては、ギュッと唇をしぼめるを繰り返している。

そんな私を見ていた彼は、苦笑して言う。

「ももじりっこ、俺を夢中にさせた責任、とれよ」

そんなこと言われても、困ります。

「無理、無理。絶対むり」

「はぁっ?なんでだよ。梶岡がいいのか?」

「違う。違うけど、向井さんの気持ちは聞いたけど、私の気持ちは?」

「あぁ、そうだよな。聞いててやるから、早く言え」

私の気持ちなんて、見透してるという顔が待ち構えている。

だけど、私の答えは…

「すき…だと思う。でも、付き合うとかは無理」