「揶揄ってなんかいない…いい加減、わかれよ」
真剣な目つきにドキッと心臓が大きく跳ねた。
わかってしまったけど…
わかりたくない。
また、前の恋のようになるのが怖いから…
「それ以上、聞きたくない」
「なんでだよ」
また、腕を捕られて体ごと捕われてしまった。
「…帰って、私に、もうかまわないで…お願い」
「無理だ。好きなんだよ…」
力強い声の後、信じられないぐらい、か細い声が切なくて心に響いた。
「…向井さんは私を好きなの?」
あぁ、そうだと大きく頷く向井さんの前で、突然、私の頬を涙がつたう理由がなんなのかわからないけど、
口が何か言おうと開いては、ギュッと唇をしぼめるを繰り返している。
そんな私を見ていた彼は、苦笑して言う。
「ももじりっこ、俺を夢中にさせた責任、とれよ」
そんなこと言われても、困ります。
「無理、無理。絶対むり」
「はぁっ?なんでだよ。梶岡がいいのか?」
「違う。違うけど、向井さんの気持ちは聞いたけど、私の気持ちは?」
「あぁ、そうだよな。聞いててやるから、早く言え」
私の気持ちなんて、見透してるという顔が待ち構えている。
だけど、私の答えは…
「すき…だと思う。でも、付き合うとかは無理」


![(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1631187-thumb.jpg?t=20210301223334)
