なんでキスされているんだろう?
ボーとする脳裏に浮かぶ疑問…
でも、ちっとも嫌じゃなくて…
もっと…もっと…と、自分から彼の唇にキスしてる自分に気がつかないでいる。
「はぁー、りこ…」
お互いの鼻先を擦り合わせて、唇を優しくなぞる彼の唇。
そして、そっと頭を抱きしめられて、しばらくの静寂の後、頭部にキスが何度も落ちる度に、チュッ、チュッと鳴る可愛らしい音色がくすぐったい。
「…むかいさん」
「ん?」
答えながらも頭部へのキスは止まない。
「梶岡さんとは…」
ピクリと彼の体が反応し、視線の先にある喉仏が大きく動き、彼の顔が見えない状態の私は、おそるおそる言葉を進める。
「朝、偶然会っただけで…」
抱きしめていた彼の腕に少し力が加わり、私の顔は彼の首元に移り、彼から薫るタバコの匂いをくんっと嗅いだ。
この匂い…好き
「…で?」
匂いを堪能し過ぎて、彼が聞き返すまでの一瞬、どこかに意識は飛んでいたと思う。
なんだっけ?
何を言おうとしたのか忘れてしまった。
「…だから…待ち合わせてたんじゃないから」
「はぁ…焦らしといて、そんな答えかよ」
「えっ?」
「そんなこと、わかってるって言ってるんだ」


![(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1631187-thumb.jpg?t=20210301223334)
