なんでキスされているんだろう?

ボーとする脳裏に浮かぶ疑問…

でも、ちっとも嫌じゃなくて…

もっと…もっと…と、自分から彼の唇にキスしてる自分に気がつかないでいる。

「はぁー、りこ…」

お互いの鼻先を擦り合わせて、唇を優しくなぞる彼の唇。

そして、そっと頭を抱きしめられて、しばらくの静寂の後、頭部にキスが何度も落ちる度に、チュッ、チュッと鳴る可愛らしい音色がくすぐったい。

「…むかいさん」

「ん?」

答えながらも頭部へのキスは止まない。

「梶岡さんとは…」

ピクリと彼の体が反応し、視線の先にある喉仏が大きく動き、彼の顔が見えない状態の私は、おそるおそる言葉を進める。

「朝、偶然会っただけで…」

抱きしめていた彼の腕に少し力が加わり、私の顔は彼の首元に移り、彼から薫るタバコの匂いをくんっと嗅いだ。

この匂い…好き

「…で?」

匂いを堪能し過ぎて、彼が聞き返すまでの一瞬、どこかに意識は飛んでいたと思う。

なんだっけ?
何を言おうとしたのか忘れてしまった。

「…だから…待ち合わせてたんじゃないから」

「はぁ…焦らしといて、そんな答えかよ」

「えっ?」

「そんなこと、わかってるって言ってるんだ」