「あったんだって」
「見ればわかるわよ。だから、早くそれ頂戴」
「あーもう、違う。向井さんに会ったって言ってるの」
あー、会っちゃんたんだ…
「何か話しした?」
「向こうから、『あいつん家行くの?』って話ふられて、『えっ』て『誰のことですか?』なるわよね。『桃寺』って無愛想に言われてコンビニ袋見てるから買い出しの帰りって牛乳を見せたらよ。『何作るの?』って聞いてきて、『白菜とウインナーのシチュー』って答えたら、『うまそうだな』って笑ったのよ」
興奮していて、牛乳を渡してくれる気のない絵梨花の話をふーんと聞きながら、彼女の手から牛乳を取りシチューに入れていると、お尻のポケットに入れていたスマホがブーブーブッと鳴った。
「それで、今日は泊まるのかって聞かれたんだけど、なんでそんな事を聞いてきたのかな?」
何か勘違いしているらしい絵梨花がニヤニヤと気味の悪い笑いをして、顔を覗き込んでくる。
「なんでだろうね」
「明日、休みだし泊まって行こうかな?」
ふふふと笑う含み笑いも、気味悪い。
「さっきから、なに?そのニヤついた笑い。気味悪いんだけど」


![(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1631187-thumb.jpg?t=20210301223334)
