こわい…

なぜ、睨まれているのか分からないが、今は梶岡さんの馴れ馴れしい態度を注意しなければ、今後、社内で私の平穏な日常を脅かされる事になりかねない状況だ。周りからの冷ややかな気配に女の感が危険だと教えてくれたのだ。

「あの…何度も言いますが、名前を呼ばれる仲でもないですし、その、周りに誤解を招く行動はやめてほしいんですけど」

周りで、梶岡さんの行動に驚き、聞き耳をたてている女性達に、皆さんが心配するような関係ではないと聞こえるように言ったつもりだったが、梶岡さんは周囲の気配に鈍感のようだった。

「俺は構わないけど、彼氏に誤解されたら困るんだね」

えっ、と驚き顔で見てくる絵梨花に目配せをしたが、更に私を鋭い視線で睨んでくる人物がいて、困惑していると、梶岡さんが、とんでもないことを言い出したのだ。

「でもね、俺、莉子ちゃん気にいってるんだよね…だから、彼氏と別れたら俺、立候補するからよろしく」

周囲に人がいる事もお構いなしに、選挙に立候補する人のように宣言され、握手を求められてしまう。

戸惑う私の手を掴み、にこやかに握手する梶岡さんに、周囲は騒つく。

特に、女性達だが…

「こ、困ります」