「ハァ‥.頼みますけど、飲みたいなら、家で飲めば安くすみましたよ」

「それじゃ、意味ないんだよ」

「よくわからないんですけど、別に飲めない私じゃなくて、一緒にお酒飲んでくれる人、他にいなかったんですか?」

目の前の男は、信じられないという顔で瞬きを繰り返していた。

「…全く、この俺に誘われて文句いう女がいるなんてな…いや、お前なら言うか⁉︎…あのなぁ、俺は服を洗ってくれと頼んだのに、縮ませるかもとか余計なことを考えて、クリーニングに出したんだろ。それにスマホのフィルム代も俺に払わせないで、出張のついでに珍味でも買ってきたら終わりだと思ってたのか?」

「まぁ、あわよくば、なぁなぁにして忘れて終わればぐらいには…」

キッと睨まれてしまった。

「お前なら、そうだろうと思ったから、こうして誘ったんだよ。終わらせてたまるかよ」

「珍味でよかったのに」

ボソッと出た言葉に、彼は、無表情に聞き返してきた。

「何か言ったか?」

「いーえ、向井さんの奢りですよね?」

「当たり前だ。男の顔も立てること覚えろよ」

ペシっと、おでこを割り箸で叩かれた。

「じゃあ、遠慮なく。後で文句言わないでくださいよ」