「ハァ‥.頼みますけど、飲みたいなら、家で飲めば安くすみましたよ」
「それじゃ、意味ないんだよ」
「よくわからないんですけど、別に飲めない私じゃなくて、一緒にお酒飲んでくれる人、他にいなかったんですか?」
目の前の男は、信じられないという顔で瞬きを繰り返していた。
「…全く、この俺に誘われて文句いう女がいるなんてな…いや、お前なら言うか⁉︎…あのなぁ、俺は服を洗ってくれと頼んだのに、縮ませるかもとか余計なことを考えて、クリーニングに出したんだろ。それにスマホのフィルム代も俺に払わせないで、出張のついでに珍味でも買ってきたら終わりだと思ってたのか?」
「まぁ、あわよくば、なぁなぁにして忘れて終わればぐらいには…」
キッと睨まれてしまった。
「お前なら、そうだろうと思ったから、こうして誘ったんだよ。終わらせてたまるかよ」
「珍味でよかったのに」
ボソッと出た言葉に、彼は、無表情に聞き返してきた。
「何か言ったか?」
「いーえ、向井さんの奢りですよね?」
「当たり前だ。男の顔も立てること覚えろよ」
ペシっと、おでこを割り箸で叩かれた。
「じゃあ、遠慮なく。後で文句言わないでくださいよ」


![(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1631187-thumb.jpg?t=20210301223334)
