向井さんを意識しているわけではないが、ただ『女として終わってるな』なんて思われたり、『俺に気があるのか』なんて勘違いされるのも嫌なのだ。

そこで悩んだ末、当たり障りのないパーカーにジーンズをチョイスしたが、スッピン顔が悩ましい。

結局、眉だけ描いてあまり顔を見られないように、伊達メガネで顔を隠し、ボサ頭は、ブラシでといて肩下まである髪は、軽くお団子にした。

これぐらいなら、女として終わってると思われないだろうし、気があると思われないだろう。

納得いく格好で、キッチンへ戻った私は、自分の分を取り分けした後、残りを大きめのタッパに入れ、ビールの6缶パックと一緒にビニール袋に入れる。

右手に重いビニール袋、左手に鍋を持った私は、彼の部屋に向かった。

彼の住む601号室のインターホンを押すと、しばらくして彼がでた。

「はい」

「桃寺です」

「なに?」