「あっ、ごめんなさい。大変…ブラウスが…」

そう言いながら、小野寺さんは、水でハンカチを濡らし、シミを作ったブラウスに当て軽く叩いてシミをハンカチに吸い込ませていく。

「完璧に綺麗にはいかないけど、こうすれば、目立たなくなるわ。ほんと、ごめんなさい。帰ったらクリニーングに出してね。後で支払うわ」

「…すぐに対処してくださったのに、その気持ちだけで充分です。ぼんやりしてた私のミスなので気にしないでください。それに、そろそろ帰らないとと思ってたので、帰るタイミングになりました」

「そう⁈それなら、すぐに帰った方がいいわ」

絵梨花が、渋い表情をして

「私のカーディガン貸してあげるから、まだいたらいいのに…」

「莉子ちゃん、まだいてよ」

いつも間にか名前呼びの梶岡さんは、そう言ってくれるけど、小野寺さんと、桐谷さんからの『帰れ』圧をビンビン感じている私は、首を横に振った。

「ごめんなさい…私に気にせず楽しんでください。それじゃあ、お先に失礼します。お疲れ様でした」

席を立った私の後に、目の前の男も席を立った。

みんな、えっ…と驚く。

「俺も明日の朝、接待ゴルフで早いから帰るわ」