調子のいい事を言う桐谷さんに、小野寺さんも同調し、先輩である桐谷さんを持ち上げる。

「砂羽さんは、私のお手本なんです。お淑やかで、綺麗な動作は、真似しようと思ってもなかなか砂羽さんのようにできなくて…女性として憧れてます」

「あら…うふふ、ありがとう。真似なんてしなくても小野寺さんは十分できててるわよ」

お世話の言い合いに、目の前の男は小声で「アホくさ」と周りに聞こえない声で呟いた。

たぶん、彼の隣に座る梶岡さんにも聞こえたらしく、視線の合った私を見て苦笑していた。

そして、しばらく賑やかな雑談が6人で始まって、私と真向かいに座る向井さんだけが、会話に入らず聞き役に徹していた。

会話に入らない私を気にかけてくれた梶岡さんに、何度か話をふられるが、愛想笑いと一言で終わらせる。

お願いだから、放っておいてほしい…

梶岡さんは、優しい男なのか空気の読めない男なのかわからないが、会話の中に私を入れたがった。

そしてとうとう…

隣の小野寺さんのグラスが倒れ、私の服にかかった。

赤ワインが、白いブラウスにシミを作っていく様を私は見ながらやっぱりと肩を落としたのだ。