世界で一番、不器用な君へ



「ふっ…れ、ん…」


ぼんやりと、声が聞こえる。


頭がぼーっとして、体がピクリと揺れる。


ゆっくり瞼を開けると、眩しくて、俺は反射的に閉じる。


「あ、気がついたわね」


再びそっと開けると、俺の顔を覗き込む顔が目に飛び込んできた。


…保健室の先生か。


「ほら、起きたわよ、彼」


呆れた声を出して、先生が視線を投げかける。


俺も真似して横を向く。


「…なんて顔してんだよ」


「…っ蓮ー!」


「重いっ!!おいもっと気遣えゴリラ!」


「ダメよ〜女の子にゴリラなんて言ったら」


先生はなにを勘違いしてるんだか、ニヤニヤしながらベッドを離れた。


「ごめんねえええええ私がっ私が…」


「だからっ!ただの立ちくらみだよ!鼻水つけんな!」


首にしがみついてはなれない…鼻水と涙で顔をぐちゃぐちゃにした一花は、あろうことか俺の体操服に顔を押し付けてきた。


…ああ、最悪だ。


俺は諦めて体から力を抜く。