世界で一番、不器用な君へ



「一花、落ち着け」


心臓が、緊張で壊れそうなくらいに鳴っている。


歓声が、ぼやけて、蓮の声が鮮明に耳に入ってくる。


「心配すんな。練習の通りにやればいい。それに、お前、ずっと俺のプレイ見てただろ?俺の息に合わせればいい」


私は必死に頷く。


バトンを、受け取る。


そこからは、あまり記憶がない。


とにかく必死に蓮の呼吸を掴んで、私は合わせた。


びっくりするほどすんなり体がついていって…


「一花!」


先輩の声が、聞こえる。