世界で一番、不器用な君へ



「遅いぞ、2人とも」


「すいません」


「せんぱ…」


開きかけた私の口を、もう片方の手で蓮が塞ぐ。


反論しようとしたその時、蓮の整った顔が、私の顔寸前まで近づいた。


「…余計なこと言ったらキスする」


…………え?


なっ…こいつこんなときまで冗談言って…!


「本気だから」


真剣な蓮の声と表情に、私は声が出せなくなる。


女子の悲鳴が、遠くから聞こえた気がした。


「…蓮、ふざけてないで真面目に」


大和先輩の真剣な声で、蓮はすぐに私を解放した。


「へーい」


それでも、私は驚きすぎて固まってしまう。


大和先輩が何か言っている。聞かなきゃ、なのに。


状況がわかんなすぎて…