「ごめん、蓮。いっぱい考えてくれたのに」


「そんなのいいから」


そんなこと、どうだっていいから。


「だから、泣くな」


あんな奴のために、泣くな。


「泣いてないよ。泣かないよ」


ギュッと、さらに強く抱きしめる。


「ちょっと、蓮、苦しいって…」


ピリリリ、と場違いな電子音が響く。


「…蓮、離して」


なぜか。


なぜか、体が動かない。


離せない。


「先輩からかもしれないから。出ないと、心配かけちゃう」


離したく、ない。


「蓮ってば!」