「あとちょっとで花火始まるね。ちょっと移動しよっか」 「はい」 人混みがますます増えてきた。 「はぐれないでね」 さっきよりも強く手が握られ、引き寄せられる。 心臓が、うるさい。 中学生のときから先輩を見てきて、まさかこんな日が来るなんて、思ってもみなかった。 チラリと先輩の顔を見上げる。 言おう。今日。 花火を見たあと。 ずっとあなたが好きでしたって、ちゃんと。 ドンッと衝撃が肩に当たって思わずよろめく。 「あっ…すみませ…」 慌てて正面に顔を戻して、息を飲む。 「ユカ、さん…?」