世界で一番、不器用な君へ



***


どんどん人通りが多くなってきた。


さっきまでいた蓮がいなくなってから、心細くて、緊張で心臓がはちきれそう。


早く、来て欲しいような。


でも、来て欲しくないような。


自分でもわからない感情に支配される。


「一花」


優しくて、落ち着いた声。


「大和先輩っ!」


「ごめん、待たせたな」


先輩は紺の浴衣を着て、笑顔で手を振った。


どうしよう、かっこよすぎるよ…


「いえ、今来たところです!」


顔、赤くなってないかな?変じゃないかな?


「…一花、いつもと違う」


「えっ、変、ですか!?」


照れ臭そうに、先輩が笑う。


「ううん、すごいキレイ。いつもも、かわいいけど」


胸が、きゅんと鳴る。


よかった。オシャレして、よかった。


「先輩も、いつもかっこいいですけど今日は100倍かっこいいです!」


「ありがと」


ポンポン、と大きな手に頭を撫でられて、更に体温が上がる。


「じゃ、いこっか」


「はい!」