世界で一番、不器用な君へ



「化粧って怖いな…」


俺が言い終わらないうちに、頬を思い切り引っ張られる。


「いってえ!引きちぎれるわ!」


「ほんっとあんたってデリカシーない!本当に私の弟!?」


悪かったな。


「変、かな」


いつもなら言い返してくるはずの一花が、暗い顔で俺に聞いてくる。


「い、や、それは…」


なんか、調子狂う…


「…いいんじゃね?きっと、うまくいく」


俺の言葉に、パッと表情を明るくする。


とりあえずその顔にほっとする。


それなのに。


「じゃあそろそろ行かないとね!蓮、送ってってあげて」


「いえ、そんな…一人で」


「言われなくてもそうするっつの」


なぜか、遠い。