世界で一番、不器用な君へ



「…ん、蓮!」


声に、ハッと目を開く。


遠くで太鼓の音が聞こえる。


「…今何時?」


「もう5時よ、あんた2時間も寝て…」


呆れる母さんを尻目に俺はあくびをする。


「一花は?」


「ちょうど今終わったのよ!蓮ちゃんびっくりするわよー?」


ほお、それはお手並み拝見だな。


「蓮!」


ふわっと、甘い香水の香り。


「どう、かな?」


俺は、思わず息を飲む。


いつもよりハッキリした目元に、ぷるんとした唇、綺麗にまとめられた艶のある黒髪。藍色の落ち着いた雰囲気の浴衣が、大人っぽい雰囲気を更に演出する。


こ、れは…