それでも君を

「…私だってずっと家の中だけで生活するわけにはいかないんだもん」



水沢先生は颯くんみたいにガッと怒るわけではないけれど、結局言われていることは一緒で、ついつい反論の一手を打ってしまう。



「ずっとじゃなくていいんですよ。ただ少しペースをあげすぎているのではと。

ん?…どこかへ行く予定だったのですか?」



はっと何かに気付いた様子で、水沢先生から質問が飛んでくる。



そうだ、元はと言えば先生が勉強したらとか言うから、私は今ここにいるんじゃん!



確かにちょっと遠出してしまったのは、マズかったかもしれないけれど…



「誰かさんが勉強したら良いとか言うから、参考書買いに」



さらっと皮肉を込めつつ答える。



「えっ、それって僕?ですよね?」



ほかに誰がいるんでしょうか?



「そうだったかも。忘れちゃったな」



「ほんとに医者を目指す気になったんですか!?」



え、ちょっと待った。



どうしてそんなに嬉しそうなの?



っていうか、誰も一言もそんなこと言ってないんですけど…?