それでも君を

ふと颯くんの手が体を拭く私の手を制止した。



不思議に思って、ん?と首を傾げる。



「ちょっとやりすぎだな」



無意識のうちに拭く手に力が入っていたようだ。



「あ…」



タオルを離すと、擦りすぎた胸元はほんのり赤くなっていた。



「もう十分だ」



私を制止したその手が、そのままするりと手首を掴み、脈を取り始める。



左腕の腕時計を見ながら静かに脈をとる彼を私は黙ってみつめた。