それでも君を

苦笑いの颯くんがベッドへと近付いてくる。



「なに?熱高いの?」



一通り見回して、颯くんが水沢先生へと質問を投げる。



「40℃超えてます」



シンプルな水沢先生からの報告に、颯くんが理解を示す。



「なるほど。…よし、じゃあ梨央はこっち向いて颯くんとお話ししてよう」




そう言って私の両頬を手のひらで挟み、針が刺される箇所へと向いていた顔をグイッと自分の方へと向ける。




「わ、ほんと熱いな」



「颯くん、冷たくて、気持ち…」



「それはよかった。で、今日は良い子にしてたのか?」



「、、、、して、た」



「今、すんごい間があったけど?」



颯くんが苦笑いしつつ水沢先生の方へと視線を向ける。



「本当ですよ。ちゃんと診察させてくれましたし。ナースコールもちゃんと押して呼んでくれましたもんね。

ーー刺しますね。
ちょっとだけごめんなさい。」




「っ!いたいっーーーぐずっ、もう嫌だぁ~」



ほらね、と言おうとしたのに咄嗟に口からでたのは全く違う言葉だった。



「あー、ほらもう終わるよ。身体辛いのに泣いたらもっと辛くなるぞ」



「うぅ…ぐすっ、もう一回なんて、頑張れない…」